第一章━立ち上がる者たち━

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 全身が熱をもったように暑い。マリオ様が暴れた際にできた傷は粗方“塞が”っていた。  不死という身体が如何に常識離れかがわかる。心臓も、骨も、筋肉も、脂肪も、神経も、血でさえ生成してしまう。  体内から魔力が損なわれていくのが確認できるので、禁術はどうやら魔力を源とし生命を維持する魔術らしい。  胸の空洞が塞がったときには、さすがに禁術の性能に驚愕した。 「……ごめ、んなさいッ」  涙がゼロちゃんの頬を伝う。別に私はゼロちゃんを責める気などなかった。けれど、彼女にしてみれば責められているように感じてもおかしくはない。  私のほうが配慮を忘れていたみたいだ。 「気にしないでくださいゼロちゃん。私が不死でなかったら今頃死んでましたから。ゼロちゃんは私に死んで欲しかったですか?」 「ん、んん……そんなわけないっ」  必死に否定するゼロちゃんが、とても愛しく感じる。マリオ様の外見も普段通りに戻ったことで安堵したからだろうか。  マリオ様を草の上に寝かしたゼロちゃんに、私は思いっきり抱きついた。 「うふふ」 「………っ!?」  もし私に妹がいたとしたら、こんな感じなのだろうか。もちろんマリオ様は大切な存在であるが、ゼロちゃんも短い期間でかけがえのない存在となっていた。 ───と、ここまで場の流れに身を任せていた少女たちが、ようやく介入を開始した。 「───訊きたいことばかりなんだけど、その前に取り敢えず、マリオを一発殴っておきますか」 「……やめときなさい」  夜はさらに更けていく。騒がしくなってきた地上をそ知らぬ顔で見下ろし、満月は煌々と自らを主張する。  まだ夜は始まったばかりだと謂わんばかりに。
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