1891人が本棚に入れています
本棚に追加
全身が熱をもったように暑い。マリオ様が暴れた際にできた傷は粗方“塞が”っていた。
不死という身体が如何に常識離れかがわかる。心臓も、骨も、筋肉も、脂肪も、神経も、血でさえ生成してしまう。
体内から魔力が損なわれていくのが確認できるので、禁術はどうやら魔力を源とし生命を維持する魔術らしい。
胸の空洞が塞がったときには、さすがに禁術の性能に驚愕した。
「……ごめ、んなさいッ」
涙がゼロちゃんの頬を伝う。別に私はゼロちゃんを責める気などなかった。けれど、彼女にしてみれば責められているように感じてもおかしくはない。
私のほうが配慮を忘れていたみたいだ。
「気にしないでくださいゼロちゃん。私が不死でなかったら今頃死んでましたから。ゼロちゃんは私に死んで欲しかったですか?」
「ん、んん……そんなわけないっ」
必死に否定するゼロちゃんが、とても愛しく感じる。マリオ様の外見も普段通りに戻ったことで安堵したからだろうか。
マリオ様を草の上に寝かしたゼロちゃんに、私は思いっきり抱きついた。
「うふふ」
「………っ!?」
もし私に妹がいたとしたら、こんな感じなのだろうか。もちろんマリオ様は大切な存在であるが、ゼロちゃんも短い期間でかけがえのない存在となっていた。
───と、ここまで場の流れに身を任せていた少女たちが、ようやく介入を開始した。
「───訊きたいことばかりなんだけど、その前に取り敢えず、マリオを一発殴っておきますか」
「……やめときなさい」
夜はさらに更けていく。騒がしくなってきた地上をそ知らぬ顔で見下ろし、満月は煌々と自らを主張する。
まだ夜は始まったばかりだと謂わんばかりに。
最初のコメントを投稿しよう!