第一幕━散らばる意志━

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「カカカ面白いなオッサン。俺たちの小飼になるッてカ?」 「……ッ!ああもちろんだ!あんたらのためなら何だってする!その代わり──」 「分かってるサ。オッサンの命の安全は保証する。俺らも馬車の扱いは得意じゃねェからナ」  にかりと青年が笑った。男も微かに口角を持ち上げる。自分は助かったのだと実感したゆえの緩みだった。しかし、男は忘れていた。 「はぁったく!勝手に話が進んでるみたいだけど、はいそうですかと頷くわけないでしょが!」  男の背後──荷台の口から一人の少女が現れた。発育はこれからと言わんばかりの容姿だが、その勝ち気な顔は整っており、十分に女としての価値がある。 「うへぇなかなか高く売れそうなガキじゃねえっスか!」 「俺……どストライクだわ」 「マジかよ、ロリコンとかきめぇな」 「うるせぇっ!十年前は同年齢じゃねえかよ」 「……大事なのは今だ。それをロリコンと世間では言うんだ」 「世知辛い世の中だな……」 「きっと世の中もお前だけには言われたくないと思うぞ」  盗賊は色めきだっていた。人身売買は皇国では許されていないが、他国へ売りつければそれなりの金にはなる。それも美少女ともなればオークションに出せば大金になる。  他にオプションが欲しいところではあるが、あれだけの上物は珍しい。盗賊がはしゃぐのも仕方ないことであった。  だが、青年は硬質な眼差しを少女へ向けていた。何か、は分からないが嫌な予感がした。 「嬢ちゃん悪いな。許してくれよ誰だって自分の身が一番なんだからよ」  男は謝る素振りを見せたが、口先だけであり悪いとは微塵も感じていない口振りであった。 「ええ許してあげる。ただしあんたの理論は私にも当てはまるみたいね」  ぶわっと風が周囲を凪いだ。
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