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「カカカ面白いなオッサン。俺たちの小飼になるッてカ?」
「……ッ!ああもちろんだ!あんたらのためなら何だってする!その代わり──」
「分かってるサ。オッサンの命の安全は保証する。俺らも馬車の扱いは得意じゃねェからナ」
にかりと青年が笑った。男も微かに口角を持ち上げる。自分は助かったのだと実感したゆえの緩みだった。しかし、男は忘れていた。
「はぁったく!勝手に話が進んでるみたいだけど、はいそうですかと頷くわけないでしょが!」
男の背後──荷台の口から一人の少女が現れた。発育はこれからと言わんばかりの容姿だが、その勝ち気な顔は整っており、十分に女としての価値がある。
「うへぇなかなか高く売れそうなガキじゃねえっスか!」
「俺……どストライクだわ」
「マジかよ、ロリコンとかきめぇな」
「うるせぇっ!十年前は同年齢じゃねえかよ」
「……大事なのは今だ。それをロリコンと世間では言うんだ」
「世知辛い世の中だな……」
「きっと世の中もお前だけには言われたくないと思うぞ」
盗賊は色めきだっていた。人身売買は皇国では許されていないが、他国へ売りつければそれなりの金にはなる。それも美少女ともなればオークションに出せば大金になる。
他にオプションが欲しいところではあるが、あれだけの上物は珍しい。盗賊がはしゃぐのも仕方ないことであった。
だが、青年は硬質な眼差しを少女へ向けていた。何か、は分からないが嫌な予感がした。
「嬢ちゃん悪いな。許してくれよ誰だって自分の身が一番なんだからよ」
男は謝る素振りを見せたが、口先だけであり悪いとは微塵も感じていない口振りであった。
「ええ許してあげる。ただしあんたの理論は私にも当てはまるみたいね」
ぶわっと風が周囲を凪いだ。
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