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華奢なゼロちゃんだが、私より力は強かった。振りほどけないと諦めた私は、ゼロちゃんに話しかけた。
「ゼロちゃん、手を離してください。私は行かなくてはいけないのです」
「……駄目、危険」
拘束する力がより強くなる。けれど私は気づいていた。ゼロちゃんの身体が微かに震えていることに。
彼女もマリオ様を心配しているのだ。またあの衝撃的な光景に恐怖を感じている。当たり前だ。ゼロちゃんは一人で何でもできるが、まだ子供なのだから。
年上である私がしっかりしなければならない、と痛切に思う。だが、私には力がなかった。
「───任せときなさい!マリ……オややこしいわね!とにかくマリオは私が助けてあげるわ!!」
高飛車な物言いの少女が現れた。私よりも年下で、ゼロちゃんと同年齢くらいの少女が槍を構えている。可愛らしい顔立ちのなかで瞳だけは荒々しかった。
「仕方ないですね。任務外ではありますが、魔物化した人間を狩るというのも悪くありません」
少女の隣に立った女の子も凄い美少女だった。まるで人形のように整った綺麗な顔、長い睫毛が特徴的で成長したらとんでもない美女となることが予想される。
しかし、その雰囲気をぶち壊しているものがある。
まだ小柄な少女に似合わぬ大斧、加えて表情が一ミリも動かぬこと。少女が恐ろしく美しいゆえに、私は恐怖を抱く。
「レッドヘルム……マリオは───」
「分かっています。冗談ですよ。気絶させるだけです」
「ああそう、あんたが言うと冗談に聞こえないのよ。まあいいか。行くわよ!」
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