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あの少女たちのように私は強くない。しかし、不思議とどうすればマリオ様を元に戻せるか分かった。
あと問題はゼロちゃんの拘束だけである。だが、これも対策は直ぐ様思い浮かんだ。
「……ごめんなさいゼロちゃん」
「へ───ッ!?」
ゼロちゃんが顔を真っ赤にし、その場にうずくまった。もちろん拘束は解けている。
「───あっ!?」
私は脇目も振らず全力で駆けた。背後からゼロちゃんの声が追ってくる。けれど、立ち止まらなかった。
苦しんでいるマリオ様を救えるのは、私だけであると確信していたからだ。これは理屈ではなかった。
「ちょっとあんたどういうつもり!?やめなさいっ!!」
激戦の最中へ私は突っ込んだ。少女が呆気にとられたように叫ぶ。私は止まらない。
獣───マリオ様が背後から迫る私に気がついた。瞳が禍々しく紅玉に輝いている。艶やかで柔らかそうだった髪も、白銀色に変わっている。
凶刃が迫りくる。命を刈り取ろうとする一撃であった。
姿かたちが豹変しようと、マリオ様はマリオ様だと私は当たり前のことを思った。
グシャリ。何かが潰れたような音が静寂を支配した。
「……っぐ!!」
口から鮮血が迸った。私の胸をマリオ様の右手が貫いていた。
ギリッと奥歯を噛み締めた。痛みは堪えられた。心の痛みに比べれば肉体の痛みなど大したことはない。
死傷足り得る傷を負わされてなお私は心が折れていなかった。そう比較するのは申し訳ないが、まるで王国の英雄───折れない剣のように。
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