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渋々校内に戻り、何処で携帯を出したかを思い出す。
「トイレ...?いや、教室か?」
動いていないと落ち着かない為、広い校内をただひたすらに歩き回っていると窓の近くに漆黒の髪を靡かせた男性が立っている事に気付く。
手に持っている物を、じーっと見つめているからか俺には気付いていない。
その横顔の美しさに思わず見惚れていると、切れ長の目をこちらに向けてきた。
身体をビクリと反応させた俺を見て、彼は綺麗に笑って見せる。
「そんな泣きそうな顔してどうしたんだよ、迷子にでもなった?」
おい、馬鹿にしてんのか。
「いえ、携帯を落としたみたいで。黒いiPhoneなんですが、見てませんか?」
「もしかして...これかな。」
「それ!それです!!わぁ、良かった...。すみません、有難うございました。何か御礼したいんですけど...」
「そんなの別にいいよ、って言いたい所だけど...実を言うと頼みたい事が1つある。取り敢えず着いておいで」
なんだか読めない展開になってきた。
前を歩いて行く男の後ろを着いて行く。
身長高いし、優しそうだし大人っぽいし女性に人気ありそうだなー。
そんな事を思いながら歩いて行くと、小綺麗な部屋へ辿り着いた。
開放感溢れる大きな窓ガラスの近くには天体望遠鏡。
何枚もの星の写真、大量の教材。
紅茶の香り。
「ソファに掛けて。紅茶と珈琲どっちがいい?」
黒いシックなソファに腰を降ろした俺は「珈琲」と口にした。
珈琲の粉をカップに入れると、テーブルに置いてあった電気ケトルでお湯を注ぐ。
「ミルク、砂糖はお好みでどうぞ」
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