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そう言った彼は、俺の目の前に座り、上品に紅茶の入ったカップへと口付けた。 それに釣られて、淹れて貰った珈琲に砂糖とミルクを加えてかき混ぜる。 長い睫毛、漆黒の髪、高く通った鼻、形の良い唇、低く甘い声。 思わず見惚れてしまう程の綺麗さに、俺の口は塞がらない。 あまり見続けるのも良くないかと目線を逸らすが、気付くと再び彼を写していた。 「あの、それで...」 「ああ、そうだったな。私は見ての通りここの教師だ。毎回見学には数多くの生徒が来るんだけど、入る子が少なくてね。」 「所謂、ゼミの勧誘ですか?」 「正解。もしあれだったら入って貰いたいなって。強制している訳じゃないし、断ってくれても良いんだけど...ちょっとぐらい考えてくれる?」 なるほど。 詳しく話を聞くと、彼は佐伯利孝【サエキトシタカ】教授(30歳児)♂ 天文学の教師で好きな食べ物は和食らしい。 確かに今まで、星とか宇宙?について習ったこと無かったな…。 記憶にあるのは小学校の理科で、少し触れたぐらいか。 あ、中学でもやったっけ…水金地火木土天海?プロミネンス? そもそも勉強嫌いだった俺が、大人しく椅子に座って星についての勉強をしていたとは思えないな。
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