蒼い月

2/7
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
   コツ、コツ、コツ。  風が窓を叩く。  高い天窓から、蒼い月が私を見下ろしている。  灯り取りの天窓なのだろう、そこだけやたら明るく見えた。  もうどれくらいの時間をここで過ごしたのだろう?  判らない。  そもそもなぜ私がここに居るのかすら判らないのだから。  私の名前は渡辺エリカ。  ちょっと田舎で、両親と3人姉妹の末っ子として生まれた私は、甘やかされて育った。  そんな平凡な人生を送っていた筈なんだけど。  相変わらず天窓には、風が当たっていた。  コツコツと。  蒼い月が私を見下ろしていた。  月だけがその理由を知っている、と言わんばかりに。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!