嘲笑

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 そんな生活を送っていたある日「比呂。お前、柔道に興味はないか?」と父さんが訊いてきた。きっと日に日に細くなっていく俺を心配したんだと思う。あまり興味はなかったが頷くと学校の部活ではなく個人が教えている道場に連れて行かれた。父さんの学生時代の友人が先生をやっている所だった。そこで初めて、父さんが柔道をやっていた事を知った。大きなトロフィーを持って満面の笑みを浮かべた父さんの若い写真に驚いた。数日通ったがやっぱり興味は湧かず、痛くて辛いばかりの日々に嫌気がさしていた。だけど初めて出た試合で自分より一回りほど体格のいい相手に勝った時、今まで感じた事のない充実感と満足感、達成感を全身で感じた。楽しい。今まで知らなかった事を後悔し、その日から真剣に練習に取り組む様になった。しかしいくら食べても筋肉をつける様に鍛えても体は細いままだった。細いから馬鹿にされる事もあったが軽く投げ飛ばすと次の日から態度が改まったのは…気のせいではなかったらしい。学校でも柔道部に入部した。やっぱり周りは体格のいい奴ばかりだった。だけど細くても体力は、平均以上だった。
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