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「だったら俺と付き合ってくれたらいいのに…」
「ん? 何?」
「な、何も」
思考が声に出てしまっていたらしい。危ない。危ない。
「今日はこれくらいにしておく?」
「うん。そうだね。ありがと、宇木」
「いえいえ」と首を振りながら宇木が腕時計を見下ろした。それを見つつ参考書を片していると、
「このあと暇?」
「うん」と頷くと「じゃあさ」と宇木が立ち上がった。
「潤も暇みたいだから、昼飯行かない?」
「行っても…大丈夫なの?」
「いまさら遠慮するか。お前にくらった飛び蹴りのせいでまだ腰が痛いんだ。孝宏は別にして、俺の昼食代は慰謝料としておごれ」
振り向くと潤が座っていた。四人掛けのテーブルが建築系の本で埋もれている。どうやらずっといたらしい。潤は建築系の学校を受験すると宇木が教えてくれた。進路は別々になってしまうがこれからもお互いに切磋琢磨し合える仲でありたい。そう思っているのは俺だけかな…そんな事を考えながら、
「潤」
と、思わず嬉しくてふにゃん笑顔を向けるとぱっと潤が顔を背けた。
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