依頼人Ⅰ

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「おい、永倉ぁ」 ああ、またか。 飽きる程に聞いた、僕の名前を呼ぶ彼の声。 僕は知っている。 振り向いたら――。 振り向いてはいけない、そんな恐怖に支配される。 「永倉ぁ、無視すんなよぉ」 語尾を伸ばし、からかうように声を掛けてくる。 やめろ、やめてくれ。 足が震える。 暑くもないというのに、汗が流れていく。 「――ふざけんなよ」 ……低く、彼が呟いた。 その瞬間、後頭部に言い様のない衝撃が走り、僕の体が吹っ飛んだ。 ガシャンガシャンと、凄まじい音を建て、教室の机が僕と共に倒れる。 「キャー!!」 女子が悲鳴を上げ、僕の傍から逃げていく。 床と机に強く打ち付けられた体には物凄い激痛が走っていた。 痛みで視界が霞む中、彼が僕の胸ぐらを掴む。
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