憫笑

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 病室に入ると柏野は眠っていた。酸素マスクは外され、モニターだけが動いている。起こさない様に潤が右側に座り、俺は少し離れた所に立った。  「孝宏…」  「ん?」  「比呂の手ってさ意外と小さいんだ。こんな小さい手でも全国制覇って出来るんだな」  応えに黙ると潤も黙った。その肩が小さく震えている。  「潤」  「大丈夫」  答えながらネックレスを箱から取り出すと、しばらく俯いたあとゆっくりとした動作でそれをつけはじめた。  「潤。これ、柏野の」  俺はおばさんに預かったもう一つの箱を差し出し、受け取った潤は包装紙を破り箱を開けた。
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