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「これがファンタジーの世界だったら、キスしたら起きるかな」
昇っていく煙を見上げながら潤が呟いた。首元には二つのネックレスが光っている。
「そうだね。キスしたら起きるね」
「そして二人はずっと一緒にいました、って?」
「うん」
それきり会話もなくぼぅと煙を見上げていると、近付く足音に視線をおろす。喪服姿のおばさんが立っていた。
「小野くん、宇木くん。今日はありがとう」
「いえ。こちらこそありがとうございました。比呂君の最期に立ち合わせてもらって」
「比呂がね、どうしてもって聞かなかったの。二人には辛い思いをさせてしまって本当にごめんなさい」
頭を下げるおばさんに慌てて首を振る。
「嬉しかったです。色々と。だから、大丈夫です」
潤の言葉におばさんは「ありがとう」と涙を拭った。
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