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「孝宏」
落ち着いた声に俺は手を離した。
「何考えてる?」
潤の勘は変な所で当たる。そしてそれは決まって必ず俺が潤の事を考えている時に限って当たる。
「何も考えてないよ。潤の訳の解らない急用のせいで俺と柏野の時間が割かれると思うともったいなくてさ。この時期は集中力が途切れるからなるべく休みたくないんだ。どうしてくれるのさ」
「わ…悪い…」
小さく溜め息をついて席に戻る。後ろの席が潤の席のため、ガタタッと座る気配がする。本に視線を落とすがどうも集中できない。振り向くと案の定、潤が真っ直ぐに俺を見ていた。
「…まだ何か?」
「孝宏って、好きな奴いねぇの?」
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