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「はい?」
質問の意味が解らず首を傾げると潤の顔が近付いた。
「女の子ですよ、女の子。聞きましたよ、孝宏さん。朝方また呼び出しがあったそうですね」
「……」
「付き合わないの?」
無自覚に、潤は俺の心を抉る。
「付き合いません。興味ありません。俺は今、勉強で精一杯です」
「あ、そ」
興味がなくなったのか潤は机に突っ伏した。思い切り後頭部をぶん殴りたい。その衝動を溜め息とともに吐き出し、俺は座り直す。読書を諦め、俺は頬杖をついて校庭を見下ろした。
「好きな人はいるよ。ずっと、ずっと、昔から」
それはお前だよ、潤。物心ついた頃から俺はお前しか見てないよ。
そう視線を送るが返ってくるのは微かな寝息。
「……おい。次の授業が始まるぞ」
容赦なく、後頭部をぶん殴った。抗議の声を「はいはい」と聞き流しながら俺は本に栞を挟んだ。
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