ごめんなさい

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「ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、お父さんごめんなさい、結衣が悪い子だったの、悪い子なの、お父さんお父さんお父さんお父さんお父さん出して出してここから出して出して、良い子になるの、お父さんの言う通りにするの……」 薄暗く、小汚い地下室、ちかちかと天井からつり下がった豆電球が緩く光ながら照らす、カサカサと辺りを、虫や鼠が走り回り、野ざらしの床に結衣はうずくまり、膝を抱えていた。 天井からつり下がる、豆電球、以外に物は一切、置かれていない、そんな場所に結衣は居た、いったい、何日、ここに居るのか、朝が何度、来て、夜が何度、終わったのか、結衣にはわからない、けれど、どうでもよかった、糞尿漂う、異臭も、走り回る、虫や鼠もどうでもよかった。。 「お父さん、ごめんなさい」 カリカリと爪を、噛み締め、幾度も幾度も幾度も、謝る、謝って、謝り続けていた、こうしたら出してくれる、こうしたらお父さんは許してくれるんだと、結衣は信じていたけれど、ギューッと身体が空腹を、訴える。 ギリっと爪を食いちぎり、小枝のような腕を緩慢に動かす。 「お腹すいたの、お父さん、お腹すいたの、お父さん、お腹すいたの、お父さん、結衣はお腹すいたの」 繰り返しながら、目の前の走っていく鼠を、落ちくぼんだ瞳で見つめた。
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