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「気をつけー、れー」
「ありがとうございましたっ」
号令が終わり、私は鞄をひったくって図書室へと向かう。
走りたいところだけれど、先生に注意をされては余計に時間を食う。
急げ。ゆっくり。
はやる気持ちを抑えて、図書室の前につくとちょうど鍵が開くところだった。
「こんにちは」
図書委員に頭をさげ挨拶をする。
「今、開きますから」
ガチャリと音がして、鍵が開く。
私は開けてくれた図書委員より早く図書室に入り、物語のコーナーに向かう。
上から三段目、端から五冊目。
そこから始まる二冊を手に取り、またカウンターへ逆戻り。
「図書の返却と貸し出し受付お願いします」
「はい」
鞄から昨日借りた本をだし、図書委員に渡し、自分の図書カードに印を押してもらう。
この図書室の良いところは、借りた本を図書委員が元の場所に戻してくれること。
面倒がなくて良い。
「これで貸し出しになりました。……っと、相変わらず読むの早いですね」
「軽度の活字中毒なんです」
「軽度、ですか……。
俺はハードカバーのファンタジー二冊を二日で読めないですけど。
頭、こんがらがってきて、何度もページ戻っちゃうんですよね」
早すぎてまだ誰もいない為、入り口近くのカウンターでは、話していても咎められることはない。
本の話をするのは私も楽しいし、うれしい。
「ファンタジーは確かに、設定が凝ってるの多いですよね。一気に読んじゃった方が、時間かからないと思いますよ」
「そう、ですね……」
「でも、楽しめるのが一番ですよ。時間がかかっても、世界観に浸れるなら素敵です!」
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