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足を失った彼女を見下ろしていた男は、街のあちこちから聞こえてくる悲鳴を聞いた。
そして、街を見回す。
ー彼は、地獄を見た。
首を失ってゆっくりと崩れ落ちていく幼い少年。
口から血を吹き出しながら悶え苦しむ女子高生。
ぐちゃぐちゃに顔を潰された老人。
体を引き千切られた、大きな塊。
周りに散らばる、内臓、内臓……
赤く染まった、見慣れた街。
彼は声をあげることも出来ずに、ただその惨劇を見つめていた。
何もないのに、次々に倒れていく人々。
声の聞こえなくなった彼女を見下ろすと、そこには
目玉をえぐり出され、少しずつ頭を潰されていく姿があった。
自分以外の人間が、見えないものによって次々に殺されていく。
彼は走り出した。助かるために。
しかし周りの人間は次々と死んでいく。
四肢を失った女性が、倒れてくる。
ー助けて。
ー助けて。
しかし彼のその願いも、叶わなかった。
彼の体は一瞬でトマトのように弾け飛び、真っ白な店の壁に真っ赤な花を咲かせた。
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