2157人が本棚に入れています
本棚に追加
エレベーターがゆっくりと閉まっていく。
中からガコンと音がして、ガタガタと登って行く。
彼は、扉の前から動かないあたしを不思議そうに覗き込んで……
「お前、バス?」
「うん…」
「俺、チャリだから」
「うん…」
「じゃな」
軽く手を振ると、背を向けて、玄関に向かって歩き出した。
大きな窓から漏れる西日が彼の横顔を照らし、茶色い髪を金色に染めている。
その横顔も
金色の染め上げられた髪も
見惚れるほどに綺麗だった。
「あ…」
その横顔に思わず声をかけてしまって
「ん?」
彼が振り向いた。
あたしが黙って首を横に振ると、彼は小さく「またな」と言った。
「うん…」
あたしが頷くと彼は安心したかのように微笑んで
オレンジ色の世界の中へゆっくりと溶け込んでいく。
あたしはその姿をずっと見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!