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エレベーターがゆっくりと閉まっていく。 中からガコンと音がして、ガタガタと登って行く。 彼は、扉の前から動かないあたしを不思議そうに覗き込んで…… 「お前、バス?」 「うん…」 「俺、チャリだから」 「うん…」 「じゃな」 軽く手を振ると、背を向けて、玄関に向かって歩き出した。 大きな窓から漏れる西日が彼の横顔を照らし、茶色い髪を金色に染めている。 その横顔も 金色の染め上げられた髪も 見惚れるほどに綺麗だった。 「あ…」 その横顔に思わず声をかけてしまって 「ん?」 彼が振り向いた。 あたしが黙って首を横に振ると、彼は小さく「またな」と言った。 「うん…」 あたしが頷くと彼は安心したかのように微笑んで オレンジ色の世界の中へゆっくりと溶け込んでいく。 あたしはその姿をずっと見ていた。
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