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同じ景色は二度と見れない。 同じ雨は二度と降らない。 あたしたちは変わりゆく時間の中で生きている。 あの頃のあたしは、 変わってしまった世界は もう二度と戻らない。 絶望にも似た思いを抱え どうして、あたしなんだろう? どうして、崩れてしまったんだろう? なくしたものばかりに 囚われて 前が見えなくなっていた。 けれど彼は教えてくれる 『……お前の母さんに会えてよかったよ。』 何が一番大切なのか。 『"翼を助けてくれて、ありがとう"って』 本当の幸せは、なんなのか…… あたしは頭の中で彼の言葉を反芻しながら 父と母の言葉を胸に刻んで、またここから歩き出す。 変わらない世界と想いが まだここに存在していることに気付いた 15歳の春。 また彼が あたしの背中を押してくれた。 『名瀬 麻斗』
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