April

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「あーっ、思い出したでしょ。ねっ、どんな人?」 「ど、どんな人って、ふつうの人だよ」 「ふつうじゃ分からないっ!孝太(こおた)も聞きたいよねーっ」 隣合わせで座る沙耶ちゃんと私の正面で、ゆっくりとビールを傾ける孝太は、私たち同期のリーダー格だ。 中でも入社当時、同じ部署に配属されていたこの3人は、なんだかんだと今でもよく集まる。 その孝太に助けを求めるような視線を送ったつもりだったのに、 「そうだな」 なんて、あっさりと返されたから、がっくりと首が沈む。 ねーねーとしつこい沙耶ちゃんに根負けして、私はちょっとだけ口を開く。 「年上の人」 「それだけーっ!?」 「…同じサークルの先輩で、背が高くて、スマートで」 「でっ!?」 「卒業したら外国に行っちゃったから知らない」 「それっきり?」 「そう、それっきり」
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