July

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梅雨の明ける頃だった。恨めしいほど照りつける太陽がさんさんと差し込む役員室。 お店の中はガンガンと冷やされているけれど、お客様の立ち入らない場所では「省エネ」「節電」、そして「経費削減」。それは、役員室でさえ例外でない。 むわっと制服に立ちこめる熱気にほてっていた体が、一瞬で冷えていった。 「今、なんて?」 「社長が倒れた。成瀬さんは役員全員に連絡。ただし、これはまだ極秘だから注意するように」 顔色をなくした総務部長が、それでも口やかましく指示を並べ立てる。引っ切り無しに駆け抜ける社員たち。 「…わかった、専務に連絡がついた。成瀬さん、病院へ向かう車を用意して」 つう…と背中を冷たい汗が伝うのが分かった。 頭がぼうっとする。 「…ッ、成瀬さんッ!しっかりしなさい!!」 「…専務」 両腕を掴む、専務の握力でハッとして目をしばたいた。
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