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 携帯 魔法使い 教室  中村風香 田原莉菜 隼人 紘己 ...........  深夜一時、隼人の携帯に一通のメールが届いた。  普通の高校生なら既に寝ている時間だが、隼人は趣味のネットゲームに熱中して起きていた為、そのメールに気付くことができた。  From 中村風香  私達の教室に来て。  風香からの、その無愛想で単調なその内容は、隼人に疑心を抱かせるには充分だった。  そもそもこんな時間にメールというのも変だし、その上、教室に来いという内容。  風香は隼人の友人の一人であり、隼人の彼女の田原莉菜とも親友だった。  隼人も時々メールのやりとりをしているのだが、いつもならこれでもかと付いている顔文字や絵文字が、今回のメールには一切付いていない。  それが──それだけなのだが、何故か隼人はとてつもない不安心に駆られたのだった。  すぐに返事を打つ。  To 中村風香  どういう意味?  だが、十分程度待っていても隼人の携帯が鳴ることはなく、隼人のこれからの行動を悩ませた。  時刻は深夜一時十五分、今から外出など親に何を言われるか解ったものじゃないが、しかし風香の思惑も気になる。いたずらにしたって、十分もすればネタバレのメールくらい届くだろう。 「……うぅん」  悩んで、悩んで、五分くらい悩んだ結果、結局隼人は風香の言う通り、自分たちが通う学校の、自分たちの教室に向かうことにした。  メールの文脈からして、風香もその教室にいるのだろう。何の用があるのかは知らないが、あのメールが異様な雰囲気を醸し出していて、尚且つこの時間帯である以上、あまり良い予感はしないが。 「さっむ……!」  完全な静寂につつまれ、ちらちらと雪が降る、街灯だけが道を照らす街道を自転車で走り抜ける。  出来るだけ早く学校に着きたいが、速度を上げると顔面に突き刺さるように吹く冷たい風が勢いを増し、隼人にその意欲を失わせた。  結果、隼人は寒さに震えながらゆっくりと街道を走っていき、予想以上に時間が掛かりそうだなと、隼人が真っ白な溜め息を吐いたその時──  ブー、ブー。  ズボンのポケットに入れていた隼人の携帯のバイブが響いた。  太ももでその振動を感じ取った隼人は、自転車を走りらせながらかじかんだ手で携帯を取り出し、着信の内容を確認する。
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