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 隼人は解らなかった。元々風香は解りにくかったし、あまり解ろうともしなかったのだ。莉菜の親友で、周りに合わせるタイプの人間。そういう風な、曖昧なことでしか、隼人は風香を知らないのである。  彼女と幼なじみである、紘己ならまた別かもしれないが──  だが莉菜は今の風香の言葉に何か感じたのか、ハッとした表情で風香の顔に視線を向けた。 「風香……アンタまさか、隼人のこと──」 「そうだよぉ? 私は隼人くんのことが好きなの。でもね莉菜ちゃん。莉菜ちゃんのことも私は大好きなんだよ? 二人とも愛してるの。どっちが良いとかそんなんじゃない、私は二人とも同じくらい好きで、愛してる! ……それでね、それと同じくらい二人が──大ッ嫌いなんだ」  ぞくり。  蔑み、哀れみ、憎しみに満ちた目をした風香のその言葉に、隼人は自分に向けて言われていないにも関わらず、背筋に走る悪寒を、抑えることが出来なかった。  それを直接、目と目を合わせて言われた莉菜は、歯をがちがちと小さく鳴らし、まるで今から殺される小娘のように怯えていた。 「あ、怖がらせちゃった? ごめんね莉菜ちゃん。でも莉菜ちゃん達が悪いんだよ? 私の気持ちなんか知らないで、二人なら気付いてくれると思ったのに、勝手に二人が付き合っちゃうから──私を、愛してくれないからっ──!」 「知らねぇよ!」  隼人が風香の言葉を遮る。  その力強い隼人の口調に、風香はキョトンとした表情で話すのを止めた。 「そんなの知るかよ……! 解らねぇよ、お前が何考えてるかなんて解るワケないだろ!? 俺のことが好きならそう言えば良かったんだ。気付いてくれるとか、そんなご都合主義に浸んな!」 「…………」  風香は隼人の言葉に何の反応も表さなかった。もしかしたら表情に出ていないだけで、何か考えているのかもしれないが、それを見抜く観察力を隼人は持っていない。 「じゃあ、言ってよ」  そして無表情の風香は、その不気味な表情を変えることなく隼人にそう言った。  嫌な予感がした。 「私を愛してるって言ってよ、隼人くん。今私言ったよ? 隼人くんも莉菜ちゃんも愛してるって。次は、二人の番じゃない」
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