小説「遺書 喪失権」

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 なんと気疲れの多い人生だったのでしょう。 私は疲れ果てました。  青々と若さを残し、待ちくたびれてしまうほど待っていた秋を目前にして、熟れていた実が晩秋を過ぎ、初冬に差し掛かった時期、腐食と見紛う程熟れたその実のように、私の心中は疲れきっているのです。  思えば私の人生は理不尽の連続でした。 ふと思い出してみれば橋の下で朝焼けの空をボンヤリと眺めていた子供は果たして日本の中でどれほどの不幸レベルなのでしょうか?
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