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とある女の母が死んだ。
女は母子家庭で育ち、肝心の母は、父、つまり女の祖父にとうの昔に勘当されていて、葬式には誰一人として身内が訪れることはなかった。
よく考えれば、女は母について何も知らない。
母の職場も知らなかったし、当然実家も親戚も、交友関係も何も知らなかった。よって、葬式は母と子二人きりで執り行われた。
唯一母から聞かされたのは、母が作った可笑しなお伽噺だけだったと、今更ながら思い返すが、特に後悔する事もない。
“もっと話をすれば良かった”
“もっと歩み寄れば良かった”
等というものは、親子の信頼関係を築けていなかった者が思う後悔だ。
幸い、女は母ととても仲が良かったし、例え母について何も知らなくともそこに後悔は無かったのだ。
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