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「おっかさん!
遅なってごめんなぁー。
いやぁー…
考え事してたら気ぃ付いたら日ぃくれてしもてたわ!」
ははは、っと元気に声をかけてみる。
「あ、あぁ、さよか。
遅い思たんや。
夜の女子の一人歩きはあぶないからなぁ。」
それだけ言うと、ちょっと、裏行ってくる、とそそくさと逃げる様に家の裏手へ行ってしまった。
…やっぱり。
おとっつぁんがおったときは遅くなるとあれだけ叱られたのに。
厳しくてしゃんとした母の面影はもう無い。
その事が一層おきよを辛くさせる。
「はぁー…。」
思わずへたり込む。
視線の先には箪笥に立て掛けてある幾つかの刀。
「……なぁ、おとっつぁん。
私はどないしたらえぇやろか…、」
刀の一つを手に取り抜いてみる。
刃と土の境が綺麗な刃文を描いている。
やはり父が作った刀は美しい。
ほぅ、と見惚れてしまう。
昔は一緒に素振りなんかしたっけ。
ほんで、女子が持つもんやないっておっかさんにえらい怒鳴られて…
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