刀鍛冶のおきよ

7/8
前へ
/17ページ
次へ
「おっかさん! 遅なってごめんなぁー。 いやぁー… 考え事してたら気ぃ付いたら日ぃくれてしもてたわ!」 ははは、っと元気に声をかけてみる。 「あ、あぁ、さよか。 遅い思たんや。 夜の女子の一人歩きはあぶないからなぁ。」 それだけ言うと、ちょっと、裏行ってくる、とそそくさと逃げる様に家の裏手へ行ってしまった。 …やっぱり。 おとっつぁんがおったときは遅くなるとあれだけ叱られたのに。 厳しくてしゃんとした母の面影はもう無い。 その事が一層おきよを辛くさせる。 「はぁー…。」 思わずへたり込む。 視線の先には箪笥に立て掛けてある幾つかの刀。 「……なぁ、おとっつぁん。 私はどないしたらえぇやろか…、」 刀の一つを手に取り抜いてみる。 刃と土の境が綺麗な刃文を描いている。 やはり父が作った刀は美しい。 ほぅ、と見惚れてしまう。 昔は一緒に素振りなんかしたっけ。 ほんで、女子が持つもんやないっておっかさんにえらい怒鳴られて…
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加