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厳めしい朧車。
その蔀が上げられて出てきたのは。
容姿端麗な男の人であった。
正確には人であった者、なのだろう。
男はズイっと顔を近づけてきて、しげしげと私を見ている。
「ほぉ、貴様が安網の生まれ変わり、とな。
よく似ておる。」
「あ、あの…?」
「我が名は源頼光。
貴様の先祖にあたる安網の刀を使っていた者だ。
今日出向いたのは、少々頼まれて欲しい事があってな。
その力量を買っての願いだ。
鬼切の刀を作れ。」
「そ、れは…!」
鬼切。
それはおきよの家系に伝わる伝説の代物。
この技巧をもって生み出されたのが童子切と呼ばれる名刀。
斬れ味に関して、町田長太夫という試し斬りの達人が、6人の罪人の死体を積み重ねて童子切安綱を振り下ろしたところ、6つの死体を切断しただけではなく刃が土台まで達した、という逸話が残っている。
「技が伝承されてないとは言わせぬ。」
「なぜ…それを…。」
「刻はきた。
時期に鬼が目覚める。
それに言ったであろう。
私は安網の刀を使っていたのだ。
安網は私の情人でな、」
情人って…
え、えええぇぇぇぇえ!
じゃあ、この人男色なん!?
「待って…!
安網って男の人じゃ…。
それに鬼って!!」
「奴は女子ぞ。」
「伝承と全く違うやん。」
あ、あかん。
思わず突っ込んでしもた…。
「あのたわけ者は女子ぞ。
その反応にその容姿。
貴様を見ていると安網を見ているようだ。」
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