1人が本棚に入れています
本棚に追加
.
現実はこんなものなのだ。
刀鍛冶として矛盾していると思う。
けれど、おとっつぁんが、父上が、大事にしてきたこの技を私は守りたい。
気が付くと、辺りは暗くなっていた。
どうやら長い間考え込んでいたらしい。
おきよは慌てて家に戻った。
おっかさんも心配してるかもしれない。
井戸から家までは少し距離がある。
おきよは皿を割らないように慎重に走った。
そして、なんとか見廻りがくる前に家に着いて戸に手をかけた時だった。
グスッ……ヒッ…
おきよは戸から手を離し、俯いた。
こうして毎夜、母は涙をながしている。
何も出来ない自分が不甲斐ない。
おきよは母が泣き止むのを待って家に入った。
最初のコメントを投稿しよう!