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「………お前は」
ふいに 彼が真剣な顔で私を見つめた
射抜かれそうだ そう思ったほどに…
「…一番人懐っこくてな、お前が俺になついてくれなければ お前の母さんもお前の兄さんも 俺と親しくはならなかっただろう…」
まるで愛しい人でも見るように彼が私を見るから
私は気まづくなって目を反らした
すると、それがバレたのかまた彼はくつくつと笑った
「…お前は 明るくて それでいて年上はちゃんと敬っていて 後輩は可愛がって しっかりしていて… でもそれは 表の姿であって 本当は 寂しがり屋だし泣き虫だし…」
え 私、裏ではダメダメじゃん…
「2月の終わりにある合唱コンテストの練習で、皆ちゃんとしてくれないからどうすればいいんだろうって言ってたな」
くだらないこと相談してるな私!
「…リーダーでもないのに、皆の為皆の為って色々悩んで頑張って…」
頭を撫でてくれる微笑みの耐えない彼
「だが 不器用なお前の言動を理解するのは周りにも時間がかかって… 親友や 親しい友達以外には冷たい目で見られたこともあって、あの時は散々泣いてたよ。 本性は甘えん坊のお前だからな。打たれ弱いんだろう。 だが、それもすぐ泣き止んで…」
本当に 楽しそうに話すなぁ…
もう私の話しかしてないじゃんかw
こんなに知ってるなんて…
私…
なんでこの人のことこんなに信用しきってたんだろう…
何か あるのかな…
私が疑問を抱えながら彼を見ると
彼はいつの間にか話すのをやめて真剣な顔で私を見つめていた
「…そんなお前が俺を闇から引きずり出してくれた」
さっきとは違う声
真剣さが伝わる
「…だから感謝しているんだ …お前を生んでくれた時雨さんに、 お前のことを側で見ていてくれた咲斗に………お前と出会わせてくれた颯さんに」
彼は 私を見つめながら、 ベッドの上にある私の手を自らの手で覆った
私は少し驚いて、ついその手と彼を見比べてしまった
「……感謝しているんだ。 ……この恩を返す時は… ―…今だ」
後ろも前も見えない真っ暗な私の世界
だけど今、彼の話を聞いている今
少しだけ…
目の前が明るくなった気がした
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