“私”

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□■□ それから、私はこの人に引き取られると知った。 「……いいんですか」 そう聞くと、彼はくすりと笑って私の頭をくしゃりと撫で 敬語はいらない。とだけ言った (答えになってない) 私はそう思いながら 離れた彼の手のなごみを惜しむように 自分の頭に触れた。 「今日 大体お前の部屋の物は俺の家に運び終えたが 他が済んでない。お前の部屋以外の物で俺の家に運びたい物があるのなら 明日取りに行こう。」 そっか 私には元々いた家があるんだ 「…その、…元いた家は…どうするの…?」 売っちゃうのかな… だとしたら… 「…それは お前が決める事だ」 そう言って立ち上がる彼 「…私は」 私は… 私は…? 家って どんな所…? 私… 「…わ、 ……解らない」 振り絞った言葉が "解らない" だって… 解らないんだ どうしたら良かった? 何て言えば良かった? それだって解らない 「……まあ遺産があるし、しばらくは大丈夫だろう。 決めるのはまだ早かったな」 そう言って窓の外に目を移す彼 しばらくの沈黙 息苦しい 「…あ、あの…」 その沈黙に耐えられなくて、私はついに口を開いた 「ん?」 振り向いてくるクールな顔に照れ、つい顔を背ける 「わ、私 いつまで病院にいなきゃかな…」 敬語はいらないと言われたので めちゃめちゃタメグチ。
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