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「…あ。でも…軽く…、だし」
「そんなの関係ないよ」
ハッキリと言われて、返す言葉もなく俯いた。
大きくて、暖かな手があたしの髪に触れる。
髪先に神経なんか通っていないのに。
体中に、電撃が走ってドキドキと心臓は加速度すらも上げていく。
「…ごめ…、触れないで…」
小さく頭を動かして、臣の手から離れた。
こんなんじゃ、ダメなの。
とても忘れるなんてできなくて。
ドキドキするばっかで、臣しか考えられなくなって。
思考は完全に客観性を失い、本能だけを働かせるようになってしまう。
「…あ…、あぁ。」
なのに、臣は傷付いたように歪んだ顔であたしを見て。
ゆっくりと手をあたしの頭から離した。
言葉とは裏腹に心を掠める”離れないで”の言葉にあたしは、見えないように蓋をする。
「………」
「………」
気まずい沈黙が流れて、今度は居心地悪くなったのは先輩らしい。
先輩が肩幅狭そうに椅子からゆっくりと立ち上がった。
「…じゃあ、俺行くな?…あとは二人で話せ」
はは、じゃあ健闘を祈る。とか何とか。
決めぜりふらしきものを吐いて去ろうとする先輩の後ろ姿に、頭の中で小さなモノがフラッシュバックした。
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