迷子の僕に。

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「あたしはさ、麻友の言ったこと正しいと思うよ」   ふたりはいつの間にか、保健室の中に入ってきていた。 「なんか、こういうのもなんだけど…」 さゆりはしゃがんで、うつむくあたしに視線を合わせた。 しっかりとあたしの目を見て、口を開く。 「あたし、美佳のことちょっと嫌だった」 思わず、あたしは目を見開く。 「だって、全部麻友が先だったじゃん。 篠原(しのはら)に逢ったのも、篠原を好きになったのも」 あたしは、胸がキリリと痛むのと感じた。 「それを、あとから現れた美佳がとってったんじゃん。 篠原に近づくために麻友と友達になって、 その上どうどうと篠原のことが好きだとか言ったんでしょ。 それに、麻友をだまして…。 許せない、麻友はあんなにずっと篠原のことを――」 「――やめてよ!!」 あたしの汚さを見せつけられたようだった。 だってそれは、ずっとあたしが思っていたことだったから。 美佳の隣で笑いながら、 一番近くでふたりを見ながら、 あたしがずっと思っていたことだった。  「美佳はもう、“死んじゃった”んだからっ…」 でも、もう今は、美佳のことを悪く言って欲しくなかった。
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