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「麻友、ごめん…」
さゆりが、泣きそうな顔をして言うものだから、
それ以上なにも言えなくなってしまう。
そんなさゆりを慰めるように、千恵が口を開く。
「ほら、さゆりもそういうつもりで言ったんじゃ――」
突然、千恵の言葉が途切れた。
不審に思って顔を上げる。
ふたりは、まずい、といったような顔をして、あたしのうしろを見ている。
あたしはもしかしてと思いながら、
そして同時に、そうではないことを祈りながら――
ゆっくりと後ろを向いた。
あたしのうしろ、ベッドの上で、
優くんが体を起こしあたしのことを見ていた。
静かな瞳で、ただ、じっと。
あれ、あたし今、なんて言ったっけ?
あたし、もしかして――…
「――そっか、美佳、死んじゃったんだったね…」
無機質なその呟きに、あたしの体はびくりと跳ねる。
「…優くん、あのね…」
なにか言わなきゃ。
そう思って口を開いたあたしを制するように、優くんが放った言葉は、あたし達を心底驚かせた。
「知ってたよ、俺」
さゆりと千恵の息を呑む音がうしろで聞こえた。
あたしも、なにも言えなくなる。
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