迷子の僕に。

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「ごめんね」   優くんの「ごめんね」は、 いったいなにに対しての「ごめんね」だったのだろう。   あたしの気持ちに対して? それとも、いままで美佳の死を忘れていたふりをしていたこと? あたしにはわからない。   ただそう言った時の優くんの優しい微笑みが、 それでいて泣きそうな微笑みが――、 あたしの頭から離れてはくれなかった。 「俺、このまま帰るから」   このまま優くんをひとりにしてはいけない。 頭の奥で、警鐘が鳴り響く。   ――でも、傷つくことが恐いあたしは、動くことができなかった。
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