迷子の僕に。

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あれは、いつもの昼休み。   俺と麻友が愛読中の、 マニアックなマンガの最新刊が出てたから、 麻友のところへ行こうと漫画を持って立ち上がった時だった。 「…あ、それ」 と、小さな声が聞こえた。   見ると、あのかわいー麻友の友達が、 俺の持つ漫画を見て言った。 「篠原くんも、それ読んでるんだ?」 「え…、市原も読むの?」   予想外すぎて、俺は思わずそう訊いていた。 美佳は、いかにも女子って感じのする子だったから、 てっきり少女マンガとかしか読まないのかと…、そう、思っていた。 「読んでるよ? あたしコミックスで読む人なんだけど、 まだ買ってないんだよね。 …貸してくれないかな?」   そう言われた時、戸惑う自分がいなかったのはなぜだろう? 俺は素直にマンガを渡した。 そして、美佳の笑顔を見ていたら、 麻友のところに行くことなど忘れてしまっていた。
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