迷子の僕に。

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世界は静かだ。なにも聞こえない。 いや、正確には、静かではないかな。 耳に突っこんだイヤホンから、 君の大好きだった歌が流れてるから。   最大限まで大きくして、 外の世界からシャットアウトされるように。   このまま、消えてしまいたいと思った。 俺を必要としない、この世界から。 君のいない、この世界から。   ――でも。 「…あれ……?」   俺の瞼の裏に、 思い描こうとしていたのとは違う人が出てきて、 俺は慌てて目を開いた。 (…麻友……)   俺はケータイを取り出し、Eメールを起動した。 一度、謝っておくべきかな。  逢えなくなる、その前に。
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