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「はぁっ…はぁっ…」
あまり人通りの多くない道を真新しい制服を身につけた少年が息を切らしながら走ってる
少年の名前は神無月 剛(かんなづき つよし)。剛は今日の柏崎(かしわざき)高校の入学式に向かっている途中だったが、今走っている道はは学校とは別の方向
端から見れば、ただがむしゃらに走っているだけにしか見えないが、剛の目には他の人には見えないものが見えていた。それは人間とは程遠い姿をした…
〈人間ダ!!〉
〈喰ワセロォ…!!〉
妖怪。剛の目には妖怪や幽霊が見えるのだ。剛は世間一般で言う“霊感の強い人間”になる
「はぁ…っ、…クソッ!」
どこまでついてくる気だっ!
既に息が上がり危なっかしい足取りの剛は額から流れる汗を拭こうともしないでひたすら走り続ける
あーもうっ、なにも入学式の日にまで追いかけられなくてもいいじゃないか!
剛は持っていた鞄を落とさないように抱え直すと目の前に見えた曲がり角を勢いよく曲がる
だが、次の瞬間、大きな音が聞こえたと思うと剛が見たものは雲一つ無い綺麗な青空だった
そして驚く暇もなく次に剛を襲ったのは全身への強烈な痛みだった
「がはッ!?」
意識が虚ろになる中、車のドアの開く音が聞こえた。あぁ、車に跳ねられたんだ…と冷静に考えていると人の話し声と共に先程まで自分を追いかけていた妖怪達の声も聞こえてき、焦る。しかし車に跳ねられた体は全く言うことを聞かず動くことが出来ない
ヤバい、これはヤバい…
自分を跳ねたであろう男達は救急車を呼ぼうとしているためその場を動かない。このままでは妖怪達に襲われてしまう…と考えるが意識は沈んでいきだんだんと目の前まで白く霞んできた
も…だめだ…
意識が無くなる瞬間、自分を跳ねた男達とは違う男の声と妖怪達の呻き声が聞こえた気がしたが、それを確かめることなく剛の意識は完全に途切れてしまった─────………………
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