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「……ごめん、もう一回言ってもらっても?」
剛は頭を抱え聞き間違えであれ、と願いながら再度訪ねるが、男は剛の気持ちなど考えずにあっけらかんとした表情で言い切った
《いや、正確には5m以上は離れられねぇらしい》
「ますます意味わからん……」
なんだ、5mって…もう、いろんな事がありすぎだろ
男はふよふよと浮きながら見てろよ、と言うと胡座を解き、スッと立ち上がると病室の出口に向かいそのまま扉をすり抜け廊下に出る
なにするつもりだよ…
訝しげに病室の扉を見つめていると突然弱い力に引っ張られた
びっくりする前に扉から男が飛び出してき、自分の中に勢い良く入ってきたのだ
状況がうまく呑み込めずにいると男がまた、自分の中から出てきた。そして顔だ出してくると
《な、言ったろ?》
またしてもドヤ顔で言った。そんな男に剛の怒りパラメーターがMAXまで達し、当たらないとわかっていてもついつい殴ってしまった
だが、そのまますり抜けて布団を殴ると思っていた拳は男の頭に直撃した
「え…」
《いって!いてぇな、何すんだよ!》
なんで…
男は殴られた頭を擦りながらチンピラのように睨み付けてきた
《人が親切に教えてやったのによ》
男は完全に出てくるとまるでマンガのようにおらおら言い出すが、剛は規格外の事ばかりで頭がくらくらしだし、ついには…
「……後の事は明日。今日は寝よ」
考えた末、剛は男を放置しベッドの中に潜り込んだ
男は突然の行動に一瞬キョトンとしていたが、剛が寝ようとしていることに気がつき呼び掛けるが剛は既に夢の世界だった
《…………自分の事なんだからもっと慌てろよ…》
剛が寝てしまい幽霊の男だけが残ると病室には剛の寝息以外何も聞こえなくなった。そんな中、男は暫く呆然と浮いていたが小さく溜め息を溢し一人虚しく呟くと再び剛の中へと戻っていった─────………………
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