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淡く染まる指先に零れ落ちそうな赤。
私の中の君が、君の存在を赤が奪ってしまうのが怖い。
ちぎれてく雲間から溢れ出す涙。あの綺麗な赤の涙が今流れたようだ。
少しずつ私の視界が滲む中に、私は君にぎゅっとしがみついた。
消えてほしくない。
もっとずっと一緒にいたい。
そんな気持ちが伝わったのか、彼はそっと微笑んだ。そして、消える間際に彼は口を動かした。
…気付くと彼は消えていた。
ズルいよ。
最後になって。
「ありがとう…だなんて…。」
私は悲しかったが、泣かない。
今泣いたら彼が心配して行けないから。
だから私は、
「ありがとう…さようなら…。」
笑ってそう言った。
…頬に熱いものが流れる。
やはり悲しければ涙は出る。
だけど私は。
だから私は。
傷を乗り越えて前に進むんだ。
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