捨てられた少女

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雨音が世界の沈黙を破っていた。 雨は嫌いだ。 せっかく静かな街に住んでいるというのにも関わらず、雨が、その特権を、台無しにしてしまっている。 雨が、アスファルトを叩く音。 雨が、建物逹の屋根を叩く音。 雨が、僕のこの鼓膜を叩く音。 どれも、嫌いだ。 うるさいのは、嫌いだ。 騒がしいのは、嫌いだ。 耳障りなこの音が、ただでさえ悪い僕の機嫌をさらに悪化させてくれる。 本当にうっとうしい、きたない音だ。 この世界のように、きたなくて汚れている。 ……そう、この世界のように。 利己的で、自分勝手な人間ばかりが増えてしまった、この世界のように。 雨がもたらすメリットというものは、僕に対しては何一つ存在しやしない。 傘という荷物が増え、転べば泥で汚れ、気温も下がって寒くなる。 ……唯一のメリットといえば、面倒で騒がしい学校の行事が、中止になりやすい、ということだ。 実際今日も、球技大会という、ほんの一部の人間しか楽しめないふざけた行事が中止になってくれた。 ……いや、でも。 中止になったというよりは、ただ延期になっただけなので、雨がやむ頃にはまた、その大会が開催されてしまうのだろう。 結局は同じこと。 不幸の先送り。 姑息な現実逃避に過ぎなかった。 ……だからやっぱり、僕は雨が嫌いだ、という点に帰路してしまうのだろう。 つまらない話ではあるが。
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