捨てられた少女

5/11
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「へくちっ!」 ……??? ????? ……くしゃみが、聞こえた。 僕のくしゃみじゃない、女の子の、それもまだ幼い女の子の、くしゃみが聞こえた。 僕はその場で、足を止める。 周囲を見渡すが、そのような子供は一切見受けられない。 見渡す限り、大人ばかりだ。学生の姿すら見えない。 だが、僕が立つ場所のすぐ右手側には、暗い通路が、あった。 路地裏とも思える、いや、路地裏にしては少し狭い、通路だった。 「…………」 傘を差していては入れそうになかったので、仕方なく、僕は傘をたたんでその通路に入り込んだ。 ……仕方なく? 僕はどうして、雨に濡れてまでこの通路に入り込んでいるんだ? そんなことをするメリット、どこにもないのに。 ……だが、そんな疑問を持っているのにも関わらずに、僕は通路を進み続ける。 まるで、何かに導かれてしまっているかのように、吸い込まれるように、その通路の奥へ奥へと進んだ。 しばらく進むと、右に折れる通路があったので、それに従って右折すると……。 右折すると。 ……そこには。 ひとりの少女が、捨てられていた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!