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「へくちっ!」
……???
?????
……くしゃみが、聞こえた。
僕のくしゃみじゃない、女の子の、それもまだ幼い女の子の、くしゃみが聞こえた。
僕はその場で、足を止める。
周囲を見渡すが、そのような子供は一切見受けられない。
見渡す限り、大人ばかりだ。学生の姿すら見えない。
だが、僕が立つ場所のすぐ右手側には、暗い通路が、あった。
路地裏とも思える、いや、路地裏にしては少し狭い、通路だった。
「…………」
傘を差していては入れそうになかったので、仕方なく、僕は傘をたたんでその通路に入り込んだ。
……仕方なく?
僕はどうして、雨に濡れてまでこの通路に入り込んでいるんだ?
そんなことをするメリット、どこにもないのに。
……だが、そんな疑問を持っているのにも関わらずに、僕は通路を進み続ける。
まるで、何かに導かれてしまっているかのように、吸い込まれるように、その通路の奥へ奥へと進んだ。
しばらく進むと、右に折れる通路があったので、それに従って右折すると……。
右折すると。
……そこには。
ひとりの少女が、捨てられていた。
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