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「…………」
その少女は、僕の方に顔を向け、見上げるようにして僕の顔色をうかがっていた。
目と目が合う。
お互いが、お互いのことを、認識し合っている。
彼女の蒼白な瞳のスクリーンの中には、確かに、僕を捕らえ映している……はずなのだが、しかし、彼女が見ているものは、真の意味で、僕ではないような……そんな気がした。
何か別のものを見ていて……そして、何かを諦めたような。
そんな瞳をしていた。
『私を拾ってくれるの?』
『家に、連れて行ってくれるの?』
彼女の瞳からは、そういった類の感情は、一切感じ取れなかった。
拾われることに期待しているというより、拾われることが当然であるような……いや、拾われることに慣れているような。
…………おそらく、捨てられたのは、一度や二度ではないのだろう。
拾われては捨てられ。
拾われては捨てられ。
拾われては捨てられ。
『……どうせこの人も、私を拾った後、ここに捨てるんでしょ……」
そんなことを、訴えかけてくる眼差しだった。
対する僕は、そんな彼女の哀れな姿を見たまま、無表情に、無感情だった。
……いや、無感情、というのは嘘だ。
正しくは、無感情を、装っている。
この少女に変な期待を持たれないようにと、無感情を装っているのだ。
……だが、この少女は初めから僕に対して何も期待していないのだと知ると、その必要も、無くなってきた。
僕は彼女に近づき、手を差し伸べてやった。
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