第一章:虚構の番人

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「明日から夏休みですね……。楽しみですよね」 その問いに、私は曖昧に頷くことしか出来なかった。 「茜さん……嬉しくないですか、夏休み?」 敏感に私の顔色を読み取った笹鳴さんは、遠慮がちにだが聞いてきた。 そうね。夏休みが嬉しいかと聞かれれば、私は首を横に振るだろう。 なぜなら…… 「家より学校の方が好きなのよ。だから一ヶ月近く学校が休みなのは嬉しいとは思えないかな」 笹鳴さんは若干だが驚いていた。長期休暇を嫌う学生はそうはいないだろうからね。 「茜さんのお家…………いえ……なんでもありません……」 彼女が何を聞きたかったのかは結局分からずじまいだった。彼女はそれから自分自身について語り始めたから。 「夏休み自体は楽しみですが、一つだけ嫌な思い出があるんです。これは去年の夏休みのことですが…………」 ナルホド……
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