第一章:虚構の番人

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駅について、笹鳴さんとは別れた。暇を潰すのに長時間付き合わせては申し訳ないと思ったからだ。 さっそく私は駅内を散策することにした。 さほど広い駅ではないが、コンビニや本屋など、いくつかの店舗が存在している。 時間を潰すには十分すぎるため、私と同じ考えでふらふらとする人が多くいる。 人の波を縫いながら様々な店舗を横目に移動していた時、ふと目に止まるものが在った。 それは人の後ろ姿。制服が私と同じなので、私立虎青高校の女生徒なのだろう。 彼女が気になったのは、挙動不審に見えたからだ。お店の商品であるアクセサリーを片手に、周囲を窺っている。 直感的に万引きをしようとしているのだと思った。 私の中で結論が出たのと同時に体が動き出していた。 「今はやらない方がいいですよ」 そっと小声で囁く。自分に掛けられた言葉だと分かった女生徒は両肩を上げて驚く。 「振り返らないで! 店員がこちらを見ています!」 そんな事実はなかったが、万引きを思いとどまらせるには手っ取り早いし、説得の手間も省ける。 女生徒はゆっくりと商品を棚に戻し、今度こそ振り返る。 彼女は微笑んでいた。優しく微笑む口元がとても魅力的だった。 「教えてくれてありがとう、感謝するね……。あら、あなた、私と同じ高校ね。一年生?」 万引きをしようとしていたとは思えない、おっとりとした口調だった。切り替えの早さに少々面食らってしまう。
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