第一章:虚構の番人

11/16
前へ
/260ページ
次へ
私と真那智先輩、二人が入った喫茶店は外に机や椅子が置いてあり、レジが通りにも面している、いわゆるオープンカフェだった。 建物の中にも席は設けてあったが、真那智先輩は私に外の席で待つように指示した。 夏の暑い日差しをパラソルが遮る。どこからか流れてくる風が肌を撫でて心地よかった。 なるほど、外もなかなか良いものね。 やがて、グラスを両手に持った真那智先輩が戻ってくる。 片方のグラスを私の前に置いてくれる。 アイスの乗った黒色の飲み物。コーヒーフロートだった。 「ありがとうございます。とっても美味しそうです」 「どういたしまして。遠慮せずにね。私の感謝の気持ちだから」 こんな時、無用な遠慮はしない方がいい。 差し出されたものを褒めるのがベストな対応。 だけど、私は演技をする必要なんてなかった。 「これとっても美味しいですね!! ありがとうございます、とても気に入りました!!」 コーヒーフロートは本当に美味しかった。 アイスをスプーン兼用のストローで掬い、口に入れた瞬間に広がる濃厚なミルクの甘味。 飲んだ途端に舌に伝わるコーヒーの苦味。 その二つが絡み合い、お互いの良さを何度も味わえる至福。 良質な材料を使ったアイスとコーヒーというのも、すぐに分かった。これ一つの値段が気になるところだったが……
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加