第一章:虚構の番人

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「そこまで嬉しそうに食べてくれるとは思わなかったわ。ふふふ、なんだかこっちまで楽しくなっちゃう」 真那智先輩も顔を綻ばせて、アイスを口に運んでいた。 だから、余計なことを聞いて機嫌を悪くさせたくなかった。 余計なこと、というのは『何故万引きをしようとしていたか』も含まれる。先輩の方から話してこない限り話題には上げないでおこう。 「茜さんのことね、どこかで聞いたことあるなと思ってたけれど、思い出したわ。笹鳴さんがよく話していたのよ」 話は私の思惑を逸れて別の方向へいってしまった。 それにしても、笹鳴さんが私のことを? 一体どんな風に語っていたのかしら? 「頼りがいのあるお姉さんで、とっても優しい人っていつも言ってるわよ。あの子、茜さんのことが好きみたいね」 好かれるのは悪い気がしないが、自分の知らないところで褒められるのは何だか気恥ずかしい。それに、何度も言うように、笹鳴さんとは特別仲が良い訳ではないのだけれど。 「ふふふ……お姉さんって、貴女達、同級生なのにね」 「本当ですね……いえ、とっても恐縮です」 助長ではなく謙遜してみた。 申し訳なさそうにする私を見て、真那智先輩は可笑しそうにコロコロと笑った。 つられて私も笑った。良い雰囲気だ。
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