33人が本棚に入れています
本棚に追加
「そこまで嬉しそうに食べてくれるとは思わなかったわ。ふふふ、なんだかこっちまで楽しくなっちゃう」
真那智先輩も顔を綻ばせて、アイスを口に運んでいた。
だから、余計なことを聞いて機嫌を悪くさせたくなかった。
余計なこと、というのは『何故万引きをしようとしていたか』も含まれる。先輩の方から話してこない限り話題には上げないでおこう。
「茜さんのことね、どこかで聞いたことあるなと思ってたけれど、思い出したわ。笹鳴さんがよく話していたのよ」
話は私の思惑を逸れて別の方向へいってしまった。
それにしても、笹鳴さんが私のことを? 一体どんな風に語っていたのかしら?
「頼りがいのあるお姉さんで、とっても優しい人っていつも言ってるわよ。あの子、茜さんのことが好きみたいね」
好かれるのは悪い気がしないが、自分の知らないところで褒められるのは何だか気恥ずかしい。それに、何度も言うように、笹鳴さんとは特別仲が良い訳ではないのだけれど。
「ふふふ……お姉さんって、貴女達、同級生なのにね」
「本当ですね……いえ、とっても恐縮です」
助長ではなく謙遜してみた。
申し訳なさそうにする私を見て、真那智先輩は可笑しそうにコロコロと笑った。
つられて私も笑った。良い雰囲気だ。
最初のコメントを投稿しよう!