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ふと真那智先輩の身に着けているペンダントが目に入った。
紫色の花の形をした至って簡素な作りのものだった。しかし、わざわざ身に着けているというのは気に入っているということだろう。
可愛いですね……そう言おうとした時だった。
何者かの声が割って入ってきた。
「あれ~~!! 蓮ちゃんじゃないか! こんなところで何やってんの?」
軽薄な口調で男性が通りから声を掛けて、こちらに近づいてくる。
蓮ちゃんという呼称から、真那智先輩と親しい間柄なのかと思ったが、先輩の曖昧な笑みから違うなと判断する。
「あらら~、可愛い子がいるじゃん! 君、なんて名前なの?」
男性は私に向かってウインクをしてきた……
赤みがかった髪に整った顔。俗に言うイケメンというやつだが、ウインクはしてほしくない。
「一年生の茜香子さんですよ。今、彼女とお茶をしていました」
私の代わりに真那智先輩が答えてくれた。
私が困っているように見えたのだろうか?
「香子ちゃんか。良い名前だ! 僕は三年の柳瀬 一晃(やなせ みはる)!! よろしく~!!」
「はい、よろしくお願いします」
笑みを浮かべて言葉を返しておく。
相手がどんな人物であろうと初対面で衝突することは避けたいし、愛想良く対応するのは私の癖だ。
だから、万人受けするコミュニケーションである笑顔を作るのは得意なのよ。
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