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わ、私は自分が可愛いかどうかなんて分からない!! だって自分の容姿なんて判断できない!!
それに私より真那智先輩の方が清楚だし、スタイルだっていいし、男の人は先輩のような人に惹かれると思う!! うん、絶対そう!!
「ふふふ……やっぱり可愛いわよ、茜さん」
顔から湯気が出そうだった。
もう本当にやめてください。私、あまり褒められるのに慣れてません。
「そ、そんなこと……」
ありません。と言おうとして思いとどまる。
私は何を慌てているのだろう。容姿について言われたせいで取り乱してしまったが、大事なのはそんなことじゃない。
現生徒会長である舘峨家先輩は柳瀬先輩のことが好き。
そして、その柳瀬先輩と何かあれば、それはつまり、舘峨家先輩の逆鱗に触れることになる。
おそらく舘峨家先輩は今、学校の中で最も敵に回したくない人だ。
充分に気を付けなければいけない。
「分かりました。教えていただいてありがとうございます」
今度こそ本当にお礼を述べた。
それを受け取り、満足そうに笑って頷く真那智先輩。
不穏な話はこれでおしまい。
私達はそれから少しお喋りをして別れた。結局、万引きについては聞けなかったが。
真那智先輩と別れてから、私は電車に乗ることにした。
もう辺りは暗くそろそろ帰らなければいけない。
本当はすごく嫌だけど……
仕方ない。
私は帰る道すがら、心を体の奥深くに沈めていった。
心を殺して、辺りの闇に同化する……
イチニチガオワル
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