第二章:不通の節理

2/25
前へ
/260ページ
次へ
夏休みの初日。 結局、私は学校に来る羽目になった。 迂闊なことにノートを教室に忘れてしまった。これがないと夏休みの課題が出来ない。 とは言え、元より外出する予定だったのでそれほど苦ではない。 ノートを取ったら図書館でも行こうかな、と思案していた。 校門を抜けると、昨日まで私が通っていた校舎が目の前にある。 部活動や同好会の活動もあるため、基本的に学校は開放されている。だから、入り口に鍵が掛かっている心配はない。 でも、妙な感じだ。 人の気配がなく静か過ぎる。 時間的には正午をまわっているのだから、誰かいても良いと思うのだけれど。 不安も束の間、玄関に入ると人がいた。 安堵の息が漏れ、自分の心配が杞憂なのだと恥ずかしくなった。 自分を安心させてくれたという独りよがりな親しみを覚えた私は、そこにいた女子に声を掛けていた。 「こんにちは。部活ですか?」 私の声に反応した女子は、こちらに顔を向けた。 心ここにあらずといった生気のない目に、私は内心で息を呑む。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加