33人が本棚に入れています
本棚に追加
だがそれも一瞬だった。
私と目が合うと、女子は目を大きく見開き驚愕の表情をしたあと、うっすらと笑みを浮かべた。
「部活じゃない。アナタはどうして学校に?」
とても淡々とした口調だった。それでも、私との会話をどこか楽しむといった雰囲気が感じられる。
「私は忘れ物を取りに来ました」
「敬語を使わなくていい。アナタ、一年生でしょ。だったら、ワタシと同じ歳」
女子に言われて、私はたじろいでしまった。
見た目の印象から上級生だと思っていたからだ。
彼女は、どこかどうと説明は出来ないが不思議な印象の美女だった。
しなやかな黒髪を肩まで伸ばし、前髪は切りそろえてある。
落ち着いた態度からも、とても同級生とは思えないほど大人びていた。
何より……
私は彼女を知らなかった。こんな目立つ容姿の人間を見たことがないというのは、交友関係の広さを自負する私にとって屈辱だ。
もしかして、登校拒否の生徒だったりするのかしら。
何にしても、彼女が敬語を使うなと言うのなら、私はそれに従うまでだ。
最初のコメントを投稿しよう!